俊チャンも私と同じ事を思っているのか、それからずっと黙っていた。「これって私から話しかけるべきなのかな?」意を決してもう一度謝ろうとしたとき、俊チャンが手前のドアに立っている男子を見ながら話し始めた。


『え~っと‥何て言うか‥さ‥さっき和樹が言っていたことなんだけど‥』

所々言葉が詰まっていた。優しい俊チャンの事だから、言葉を選んで傷つけないように否定しようとしているんだよね。

私には、その心遣いだけで嬉しかった。だから安心させるために、必死で笑顔を作り出来るだけ明るい声で私の思いを伝えた。


『私の方こそ何かごめんね。一人で帰るのが寂しいとか‥誤解しないでね!そんな事全然思ってないから一人でも大丈夫だよ。じゃあ、また明日学校で逢おうね』

そう言って素早くドアの方に向かって、すたすた歩き始めた。泣きそうな思いを堪えながら‥。すると、


『ちょっと待って!!』

突然呼び止められ、俊チャンが慌てて追いかけてきた。私はその場に立ち止まり振り返った。

『えっと‥』

自分の突発的な行動に頭が付いていってないようだ。一生懸命言葉を捻り出していた。

『だからね‥』

なかなかその先を言ってくれない。一体私に何を伝えようとしているんだろう?


断られたって気にしないよ?
ううん、本当は気にしちゃうけど‥

一緒に帰れなくても平気だよ?
ううん、本当は一緒に帰りたいけど‥


そんなに困っているなら無理しなくていいんだよ。そんな事を思っていると、俊チャンが動かなくなった。不思議に思い正面を向くと目が合った。でも、今度は目を逸らさなかった。


『うん。いいよ!』

ハニカミながら言われても何が良いのか困ってしまった。その様子に、俊チャンも気付いたみたいで、どうしよう‥という顔で私を見ていた。