私たちは、何の打ち合わせもせずに二人に近づいた。

話しかけようとした時、私たちの表情を見て気味悪がっていた。

『何だよ!にたにた笑って‥』

和樹君が話している最中に、俊チャンが少しずつ歩み寄って行ったので「何をするんだろう?」と思いながら見守っていると、突然和樹君に飛びついた。


『うわっ!?何するんだよ!!』

和樹君は、少し強引に腕を引っ張って自身から俊チャンを離そうとしていたが、断固として俊チャンはしがみついていた。

『暑苦しいわ!』

体を左右に振っても離れなかった。

『おい~‥』

動きつかれたのか、和樹君の動きが止まった。一部始終を見ていた私と華代は、目が合って笑い合った。


すると、漸く俊チャンは離れてまじめな顔で言った。

『この、幸せ者』

私は、シリアスな雰囲気をぶち壊すように続けて言った。

『この、幸せ者~』

『ぷっ』

俊チャンが先に声を上げて笑い出したので、続けて私も笑った。

『お前ら‥どんなシナリオ作ってきたんだよ』

唖然とした顔で私と俊チャンを交互に見た。でも、何処か余裕がないようだった。


それもそのはず。
俊チャンがとった行動が大胆だったため、いつの間にか教室の中で私たち4人は、注目の的になっていたのだ。教室の中を見渡してみると、ドアの前に立っていた男子が徐々に私たちに興味を持ち始め、歩み寄ってくる者まで出てきた。

何か聞かれる前に、華代とこの場から立ち去ろうと思い話しかけた。


『華代、一緒に帰ろう?』

すると、私から視線を外し和樹君の腕にしがみついた。