『何あれ?俊君にベタベタしちゃってさ。一体何様のつもりなの?』

『まぁまぁ仕方ないって』

私は華代の怒りを抑えた。
ここは音楽室。1週間後に控えた音楽会の為の練習をクラスの人としていて、今は休憩中。

『仕方ないって。結は本当にそれでいいの?』

『良いも悪いも‥私には関係ないもん‥』

『結‥』

私は二人の姿を見ていられなくて窓の外を見た。俊チャンの好きな外の景色を。

俊チャン‥あなたはどんな事を考えて窓の外を見ているんですか?ふと、そんな事を考えながら見ていると、痺れを切らしたのか華代は私を無理矢理引っ張って、二人の前まで連れて行った。


『あ、あの~』

『何?華代。私に何か用?それとも俊に?』

『えっと‥』

『用がないならもういいかしら?俊、向こう行って打ち合わせしよう』

『あっ、あぁ。じゃあ、またな』

俊チャンと田中さんは別室に行ってしまった。


『ごめん結‥何も言えなかった』

『ううん。ありがとう。あっ‥』

私は通路に落ちていたボールペンを拾い上げた。これって確か俊チャンがいつも使っているものだ。どうしよう‥追いかけるべきかな?でも、今行ったら田中さんも一緒だよね。そんな姿見たくない‥。

そんな時、和樹君が前から歩いてきた。


『和樹君!!』

『おう。どうした桜井』

『これ、俊チャンがさっき落としていったの。渡しといてくれる?』

『そのくらい自分で渡せよ!最近話してないんだろ?』

『‥うん。だって音楽会近いしさ。忙しそうだし‥』

『別に忙しくないだろ。田中が俊を引っ張りまわしてるだけだよ』

『そうかもしれないけど‥』

『分かってるなら自分で渡せ。な?』

『う、うん‥』

和樹君は笑顔で仲間の方に行ってしまった。私は手にしたボールペンを、とりあえず筆箱にしまった。