教室に入ると誰もいなかった。私たちはランドセルを机の横に掛け、三人でたわい無い話をしていた。
しばらくすると、クラスメイトが徐々に登校してきた。


昨日、一緒にキックベースをした男の子が私たちに話しかけてきた。

『なぁ、昨日の和樹が打ったボールってあったのか?』

そう質問されたとき、三人で顔を見合わせて思わず噴き出してしまった。

『お、おい!俺の質問に誰か答えろよ!何で三人は笑ってるんだよ?さっぱり分からねぇ』

その男の子が少しムキになっていたので、私から今朝の出来事を説明した。二人は私が登校する前からボールを捜していたこと。そのボールが「考える人」の像の足元に置いてあったこと。

なんか、思い出したら笑いが止まらなくなってしまい、私たちはお腹かを抱えて大笑いをしていた。すると、クラスメイトが私たちの周りにどんどん集まりだした。


『何でこの三人はこんなに笑ってるんだ?』

『まだガキなんだよ、こいつらは』

『ふ~ん』

いつしか私たちは皆の見せ物になっていた。

『まっ、いいや。ボール見つかったんなら。それで、今日は何して遊ぶ?』

『そうだな~‥』

今日という日は、まだ始まったばかりなのにもう休み時間の事を相談していた。「みんな気が早いな。」私は輪の外から皆を見ていた。

ん!?

背後から冷たい視線を感じた。振り向くのが凄く恐かったけど、誰が見ているのか気になったので、少しずつ体を後ろに回転させた。

だ、誰‥‥えっ!!?

私は恐怖で体が震えていた。そんな私の異変に和樹君が気付いた。


『桜井どうしたんだ?体が微妙に震えてるけど‥?』

『‥‥‥』

私は返事が出来なかった。というより声が出なかった。あの子達の視線が冷たく私の体を突きつけていた。

そんな私の異変に俊チャンも気付いていた。‥気付いていたけど、手を差し伸べてくれなかった。

『桜井!?』

和樹君の二度目の問いかけにようやく我に帰った。

『どうしたの?和樹君』

『どうしたはこちのセリフだよ。何かあったのか?』