少し前に俊チャンと一緒に帰った時とは違って、交通量が少なかった。そのため、危険性はあまりなかったので、俊チャンの横に並んで一緒に帰ることが出来た。


前回同様、俊チャンは自然と車が通る方に行き、私を安全な方に寄せた。言葉ではなく、行動で示してくれるところが男らしいと思った。

凄く嬉しかった。だから一言「ありがとう」とお礼を言いたかった。でも‥中々言い出すことが出来なくて、下を向いたり横目で見たりを繰り返していた。


不自然な動きをしている私に‥気付いてくれない。それどころか、たまに見る俊チャンは何も言わないSPの様に見えてきて遠い人に思えた。

こんなに近くにいるのに遠い‥。

気付いて欲しい。私の気持ちと私の存在に‥


すると、ようやく私の視線に気付いてくれた。緊張する中、やっと「ありがとう」と言う事が出来た。言えた時は、既に歩いてから100mは軽く超える場所まで来ていた。

「今頃?」って思うよね。
そんな事、私にも十分と言っていいほど分かっていた。でも、言い出す勇気がなかったの‥


俊チャンは、そんな私の気持ちを分かってくれた。一度その場に立ち止まって、私の方を向いて「どういたしまして」と言いながら微笑んでくれた。その笑顔を見たら、一気に肩の力が抜けた。

その時見てしまったの。俊チャンの肩の力が抜けた所を。

「私と同じで、緊張‥していたのかな?」


本当は違うのかもしれない。でも、同じ気持ちでいたのかもしれないと考えると自然と頬が緩くなった。


私たちは、一言会話したことによって、普段どおり接する事が出来ていた。