『格好良かったよ』

そう言うと、下を向いていた和樹君は、私の方を見てきた。

『い、今なんて言った?格好良かったって‥言った?』

信じられない!って顔で私を見てきたので、可笑しくて笑ってしまった。

『うん。言ったよ(笑)』

『ど、何処が?』

まだ信じられない!!という顔をしていた。だから、私が思ったことを素直に和樹君に伝えた。


『俊チャンの投げた球を、こんな処まで飛ばしたんだよ?未来のプロ野球選手が投げた球だよ!』

『そこまで言う?』

俊チャンは、私の顔を覗き込むように見てきた。

『じゃあ、私の言った事は違うの?』

『いや、結チャンの言うとおりだよ』

私と俊チャンは見つめ合って笑った。和樹君は、そんな私たちのやり取りを呆然と見ていた。


『そうだったな。俺って凄いのかも』

『そうだよ。凄いんだよ!!』

『あ~』

私たちは立ち上がり、服についた草を振り払った。


『さて、ボール捜しは明日にして、今日はもう帰ろうね?』

私の意見だけを押し付けてはいけないと思い、二人の様子を伺うように聞いた。二人は顔を見合わせてから返事をした。

『だな。俺も明日の朝、一緒に捜すの手伝うから』

『悪いな。じゃ、俺はこっちだから』

『俺達はこっち。じゃあ明日』

『おう!明日』

和樹君だけ違う方に向かって歩いて行った。


『結チャン、暗いし途中まで一緒に帰ろう』

『うん!!』

大きく返事をして、右足を一歩前に出そうとした時


『あっ、ちょっと待って!校門まで走るのは無し。歩こう?』

『分かってるって(笑)』

私たちも家に向かって歩き出した。