試合が終わってから、どのくらいの時間が経過したんだろう?いつの間にか街灯が灯されていた。下校のチャイムも、随分前に鳴っていたような気がする。


『なぁ、もうボール捜すのは諦めて帰ろうぜ!!俺、お腹空いた』

『俺も』

『俺だって‥』

次々に「帰りたい!!」って言う声が飛び交ってきた。


『そうだな。暗くて見えないし‥ボール捜しは明日にするか?なぁ、俺の球を遠くに飛ばした犯人』

そう言いながら俊チャンは和樹君を見た。

『分かったよ。明日、俺一人で捜します。今日は解散!!はい、さようなら』

和樹君は後ろを向いて、手をヒラヒラと横に振った。そんな姿を見たクラスの男の子は、「お礼は?」と笑いながら言った。和樹君は振り返り、観念した様子で「ありがとうございました」と言って、頭を下げた。

みんなは「仕方ないな〜」と言い、笑いながら帰って行った。残ったのは、私と俊チャンと和樹くんの三人だった。


一人まだボールを捜している和樹君の傍に、俊チャンがゆっくり近づいて行った。

『良かった。三球目はミットに収まって』

嫌味を言っているけど、手は草を払いのけ目はその先を見ていた。和樹君は振り返ることなく黙々と手を動かしていた。


『なぁ〜‥今日の俺って格好悪くね?三振して、その上貴重なボールを無くして‥』

和樹君はかなり落ち込んでいた。さっきまで動いていた手が、いつの間にか止まっていた。でも草を掻き分ける音は聞こえてくる。

そう、俊チャンは平然とした顔で作業を進めていた。


『そうか?俺の投げた球に当てたのは、和樹だけだったぞ。それでも満足しないっていうのか?』

『‥‥‥』

和樹君の返事は返ってこない。俊チャンは一度ため息をついて私を見てきた。


『試合を見ていた結チャンは、和樹のプレーを見てどう思った?』

『えっ、私!?』

突然、私に話をふって来たので驚いて立ち上がってしまった。私は一度俊チャンを見た後、和樹君の方に目線を移して話し始めた。