『ごめん!!
実は‥試合が終わった後、みんなで俊の後を追ってたんだ。そんで、ずっと草むらに隠れてた』

『はぁ〜?』

優等生の小林君が先頭を切って謝ったのに、他のクラスメイトは開き直った口調で自分の言い分を嘆いた。

『だって‥もうすぐこの話終わるだろ?』

『タブン』

見た目はヤンキーっぽいけど根は優しい西山君は、ベンチの背もたれに寄りかかりながら遠くを見つめていた。

『俺なんて、めちゃめちゃ出番少なかったんだぞ。中学年の話の時に、堀内先生とバスケの対決があると思ってたのに‥。それさえあれば、いっぱい登場して俺の人気が増して彼女が出来たのかもしれないのに』

『そんな事、俺に言うなよ』

丸山君は、いつも持ち歩いているバスケットボールを右手の人差し指の上で回していた。


『贅沢言うなよ!!』

突然、怒鳴り声が聞こえた。
その声にビックリしてか、私と華代の目から流れていた涙がピタッと止まった。

ゆっくりと声のした方へと視線を移すと、今にも泣きそうな顔で心地君が立っていた。

『突然どうしたんだよ?』

和樹君は立ち上がって、心地君の肩に手を置いた。

『どうしたじゃねぇーよ!!静かに聞いてりゃ、お前達の言い分なんて可愛いもんだよ。俺なんて、俺なんて‥苗字すら紹介されてないんだぞ!!』

『『『はぁ〜?』』』

あまりにも突然に、それも拍子抜けするような内容だったため、しばらく皆の目は見開いたままだった。

『だから、最後くらいははっちゃけて登場してやろうと思ってさ。でも‥最後って思ったら、なんか急に‥』

『おい、泣くなよ』

和樹君は肩に置いていた手を背中に持っていき、バシンと背中を1回叩いた。

『痛ってぇーな。
そうだ!!最後だし、ここで読者の皆さんにお願いがあります。俺の苗字を考えて下さい。お願いします』

『勝手なお願い、ここでするんじゃねーよ!!ってか、心地のキャラってこんなんだったっけ?』

『分からねぇ。本当にこいつの出番って少なかったし‥』

『俊、和樹〜それはないだろ〜』

心地君は2人の服の袖を引っ張りながらその場にしゃがみ込んだ。そんな姿を私達は笑いながら見ていた。