風が冷たくなってきて顔が強張ってきた。そろそろ帰らなくちゃ。でも、もう少しだけ‥ここに座っていたいな。

そう思っていると、俊チャンの手が私の手の上に置かれた。

『寒くない?』
『うん‥』

予想外の行動にかなりドキッとした。今でも心臓がドキドキ鳴っている。けれど今までとは違って、緊張感の中に安心感が入り混じっていた。

もう少し一緒にいられる。

私の顔から笑顔が戻った。


『そうだ。
ねっ!どうして私がここにいる事が分かったの?』

思い出したように聞くと、眉間にしわを寄せて少し前の記憶を呼び起こしていた。難しい質問をしたわけではないのに、途切れ途切れに話してくれた。


『試合終了後にクラスの皆が俺の周りに集まってきて、「おめでとう」とか言われてさ。その中の‥‥女で‥髪の長い‥背が高くて‥眼鏡はかけてないんだけど‥3人くらいで固まってた人が、結チャンが土手沿いから見てたって話してて。

試合が終ってすぐに追いかけたから、そんな遠くには行けないなって推測してたら、この場所に行き着いたって感じかな』

『観戦してたの誰にも見られてないと思ってたのに‥話してた3人って誰なの?』

『えっ?』

俊チャンの瞬きの回数が異常に増えた。

つまり誰が話していたのか分からないってことね。でも、6年間も同じクラスにいたのに‥‥女の子3人が少し可愛そうに思えて、引き攣った表情で見ていた。


『ねぇ、帰ったら怒られない?』

『やべぇ!!そういや暗いな。時間ヤバイか?』

不安そうな顔で聞き返された。

『う、ううん!私の家は大丈夫。そうじゃなくて‥
さっき、試合が終わってからすぐに追いかけてきてくれたって言ってたから‥‥。ほら、決勝戦だったじゃん。だから打ち上げ?みたいな事があるのかなって思って。もしそうなら、監督とかチームメイトに怒られちゃうんじゃないかなって‥‥』

『俺の心配してくれてるんだ?』

コクンと静かに頷いた。