『結チャン‥?』
『9回の裏、バッター2番をライトフライで1アウト』

『どうしてそれを?‥まさか!!』

ゆっくりと振り向いて微笑んだ。俊チャンの視線がまっすぐ私に向けられて恥ずかしかった。でも、目を逸らすことなく次のバッターの結果を言った。

『バッター3番。
サードへの強襲内野安打で1アウト、ランナー1塁』

『うん』

その通り、と相づちを打ちながら聞いてくれた。

『そして注目の選手がバッターボックスに立った。ホームランが出れば逆転サヨナラ負けが待っていた。
ファールボールが続き、試合を決めたのは10球目だった。4番をセカンドゴロに抑え、ゲッツーで試合終了。見事俊チャンが所属しているチームが優勝しました』

言い終わった後、手がジンジンと痺れるまで拍手をした。


『決勝‥見てくれたんだ』

『最終回だけなんだけどね』

『充分だよ、ありがとう』

『う、ううん!!私が見たかったの。
‥‥お疲れ様。マウンドに立った俊チャンの姿、凄く格好良かったよ』


今だったら素直になれるような気がした。保育園から変わらずに抱いていた大切な想いを伝えるのは今しかない。

ずっと隠していたこの想い。
気持ちを伝えて断られるのが怖かった。

それだったら、このままの関係でもいいって‥そう思っていた。でも、それはただの臆病者で逃げているだけだって分かった。


気持ちを伝えることで本気だって事が相手に伝わる。

隠していたらその想いは本気じゃない。

華代、和樹君、悠君、花梨、千鶴、由愛‥

皆がそう教えてくれた。