約1年前‥
何となく入った陸上クラブ。普段履いているサイズより小さい靴を履かされて、慣れるまで凄く足が痛かった。練習も想像以上にキツくて嫌だった。でも、逃げることなく通い続ける事が出来たのは、全部俊チャンのおかげ。

苦しいことも辛いことも、同じ練習をしていた俊チャンだけは分かってくれた。一緒に頑張ろうって言ってくれた。いつも励ましてくれた。

キツイ練習が楽しいと思えたとき、自己ベストを更新することが出来た。それからは、練習前に目標タイムを設定して競い合ったりもした。

始めはギクシャクしながら宿題をやっていたけど、いつしか何でも話すようになった。授業のこと、友達のこと、家でのこと‥。もしかしたら華代に話していないようなことまで言っていたのかもしれない。それくらい自然体でいられた。

バレンタイン
ホワイトデー

勇気を出してチョコを渡してよかった。お互い誤解していたんだって、話してみて分かった。この2つのイベントのお陰で私達の距離がグッと近づいた。‥と思っていたのに。


3秒間目を瞑った後、ゆっくりと開いて校庭を見た。クラスの男の子が楽しそうに走り回っているけど、その中には俊チャンの姿がなかった。

”放課後は俺らとの遊びに付き合う事”

そう言ったのは俊チャンの方じゃん‥

足を伸ばして体を反り、そのままの姿勢で後ろに一回転をして着地をした。少しだけ足に刺激が走ったけど、すぐに消えてなくなった。

『凄いな‥桜井は』

『何が?』

逆上がりをして体を上げ、右足を支柱に掛けて再び棒の上に座った。一連の動作を和樹君がジロジロと見ていたので少し恥ずかしかった。

『さっきの業だよ。体を反らして回転するなんて‥華代はやるなよ!』

『何で?』

『何でって。危ないからに決まってるだろ!』

『でも結がやってるし‥』
『桜井は桜井。華代は華代だろ?!』

『‥うん』

言い合っている姿が羨ましく思えた。少し前までは、私と俊チャンもあんな感じだったのかな?と、2人を重ねて見ている自分がいた。