『私も、このままでいいと思います』


『田中さんも?理由は何かな?』


田中さんは一度、俊チャンを見てから話し始めた。

『学校に慣れてきたけど、クラスみんなの名前とかまだ覚えてないです。もっと仲良くなってからの方がいいと思います』


先生は「なるほど~」と言いながら、背もたれに寄りかかって少し考えていた。


『そうね。席替えは、もう少し先にしましょう』

その言葉に、田中さんはホッとしていた。


『先生、話はそれだけですか?』


『えっと~もう一つ』

先生は、机の引き出しから1枚の紙を出した。


『先生これは?』

田中さんは人差し指で紙を指した。


『これはね、このクラスの1年間の予定表なの。
2学期は運動会。3学期は音楽会といった学校行事があるんだけど、1学期は学校の行事がないのよ。そこで、私たちのクラスだけで何か出来ないかしら?って先生思ってね』


2人は同時に1枚の紙を見た。確かに、1学期だけは白紙だった。


『何かクラスでやりたいことはないかしら?』

2人は考えた。


俊チャンの頭の中では「野球」という案が浮かんだけど、体育の授業で出来ないこともないので、この場では言わなかった。



『調理‥とかどうですか?』

田中さんが言った。


『調理?でも、みんなに包丁を持たせるわけには‥』

先生は頭を抱えた。


『簡単に出来るものでいいんじゃないんですか?例えば‥ホットケーキとか。私たちは混ぜるだけとかなら安心』


『ホットケーキね~‥そうね。じゃあ、候補に挙げておきます』

田中さんは、凄い嬉しそうだった。