『へぇ~、そんな事があったんだ』

ニヤニヤした顔で華代が私を見ている。

『な、何?』

『別に~。
たださ、陸上始めてから結から笑顔が絶えなかったって言うか‥とにかく毎日が楽しそうだったなって思って』

『うん。凄く楽しかったよ。誤解も解けたし』

『そうだったね。でもさ~鳴海君も黙ってないで結との事、説明してくれても良かったのにね』

『もういいよ。もう過去のことだし‥』

そう言って、視線を俊チャンの方に移した。俊チャンは和樹君と悠君と3人で楽しそうに話をしていた。じっと見つめていると、華代が耳元で囁いた。

『気持ち伝えないの?』

『へっ?』

驚いて後ろに下がると、机に足がぶつかり「ガシャーン」という音が教室に響き渡った。すると、クラスのみんなの話声が一旦止まり、注目の的となった。

『ご、ごめん!何でもないから』

両手を合わせて謝ると、何事もなかったように再びみんなの話がそれぞれに始まった。

ふぅ~

大きなため息をついてから、華代を睨んだ。

『もう!突然何言い出すの!!』

『ごめんって』

華代は私に背を合わせて並び、寄りかかってきた。

『でもさ、今回の一件で俊君の気持ち分かったでしょ?』

『俊チャンの気持ち‥?』

『そう。
結と悠君との事ずっと気になってたって、それって結の事が好きだからだよ。最近ずっと一緒にいたし。だから‥』

話の途中に割り込んだ。

『それはないよ』

『何で?』

『俊チャンは優しいから‥だから気にしてくれてただけだよ‥』

『また始まったよ‥結のネガティブ思考』

『だってそうでしょ?好きだなんて言われた訳じゃないし。それに一緒にいたのは、陸上があったお陰であって、これから先はどうなるか分からないし‥』

塞ぎこんでいると、右手に何かを渡された。