中途半端に時間ができたので、今日はゆっくり歩いて練習会場に向かう事にした。

暫く歩いた先に、4年前通っていた保育園が見えてきた。校門に目を向けると、お迎えに来たと思われるお母さんが嬉しそうに子供の帰りを待っていた。それを見ていたら、ふと昔の事と最近のある出来事が重なった。

すると、自然と5文字の言葉が出た。

『ありがとう』

『えっ?』

俊チャンは私をじろっと横目で見てきた。

『私を見つけてくれて、ありがとね』

にっこり微笑んだ後、保育園に通っていた時に覚えた歌を歌い始めた。卒業してから1度も歌っていなかったのに、最初の歌詞を思い出したら、その後も次々と歌詞が浮かんできてびっくりした。それと一緒に、当時の思い出も蘇ってきた。

『よくクラスの皆で、かくれんぼして遊んだよね。覚えてる?』

『うん‥』

『私いつも「有り得ないだろう!」って思うような所に隠れてたっけな。だから、かくれんぼで鬼に見つかったことはなかった。そんな所ばっかにいたから背、伸びないのかもね(苦笑)』

『かもな(笑)』

『ひっどぉーい!!
でも1回だけ‥誰も私を捜しに来てくれなかった事があったね‥』

そう。あの日は、雨が勢いよく降ってたのを覚えてる。

校舎内に隠れる場所がなくなってきたから、外に隠れようと思った。プールの中は廊下から丸見えだし、砂場の近くにある木の後ろだと、私の体を隠すことは出来なかった。どこか良い場所がないかな?と思いながら校庭を歩いていると、一つの遊具を見つけた。

「ここなら見つからない!!」

そう直感して、その中に体を潜めることにした。

でも、いくら待っても誰も見つけに来てくれなかった。仕舞には雨が降り出して、外で遊んでいた人も校舎の中に戻って行った。

何度か戻ろうと思ったけど‥もう少しすれば探しに来てくれる。誰かが私を見つけてくれるって、そう信じていた。


クシュン

両手をクロスさせて、二の腕辺りを擦って寒さを凌いでいた。でも‥やっぱり待っても待っても誰も見つけてくれなくて、諦めかけたその時

『結チャン、見ぃぃっけ(笑)』

びしょ濡れの俊チャンが、私を見て微笑んでいた。