『そうだ!!』

今、思い出したという顔で華代が叫んだ。

『ど、どうしたの?』

恐る恐る聞くとニヤニヤした顔で私を見ていた。

『だ、だから何?華代の顔‥怖いんだけど』

後ろに下がろうとしたけど、扉に寄りかかっていたからそれ以上下がれなかった。仕方がないので、体を左に傾けて後ずさりして後ろに下がった。

『あっ!』

屋上の隅まで来て、とうとう逃げられなくなってしまった。少しずつ華代との距離が縮まり、あっという間に目の前には華代の顔があった。何をされるんだろう?何を言われるんだろう?そんな事を考えていると、華代の手が私の頭の上に置かれヨシヨシと撫でていた。

いまだにこの状況を理解できていない私をよそに、華代は楽しそうにしゃべり始めた。

『よく頑張りました』

ん!?

声には出さなかったけど、私がそう感じているのを読み取ってくれた。

『さっきの授業の事だよ。和樹から聞いたよ!ちゃんと俊君にメール送ったんでしょ?それで返事は?どのくらいやり取りしたの?その前に俊君って事に気付けたの?結からだって事に気付いてくれた?それから‥はぁ‥はぁ‥』

一気に言ったので息が切れていた。

私の事にこんなに一生懸命になってくれている華代の顔が可愛かった。でも、それを今言ったら怒られそうだったので心の中に閉まっておいた。

『俊チャンは私が「ひまわり」だって事に最初のメールで分かったんだって。私は‥』

少し顔を赤らめながら話し始めた。


順を追って話している最中、華代は「のろけ?(笑)」と横やりを入れてきた。いつもだったら否定してたけど、今は気分が良かったから「あっ、分かった?だって嬉しかったんだもん!!」と幸せオーラを前面に押し出した。

一瞬驚いた顔をした華代も、元気を取り戻した私を見てホッとしていた。


キーンコーン カーンコーン

4時間目の終了のチャイムが鳴った。

『じゃあ、そろそろ教室に戻ろっか?』

『うん‥
今日は付き合ってくれてありがとう』

『どういたしまして』

華代から鍵を返してもらい錆びた扉に鍵を閉めた。