『どうしたらいいんだろう‥』

空と雲に向かって話しかけたけど、おにごっこに夢中で私の話なんか聞いてくれなかった。それでも、しゃべり続けていればいつか聞いてくれるんじゃないかと思い、思っていることをぶつけた。

『鳴海君はね大切な友達なの。それはこれからも変わらないと思う。でも‥でもね、断ったら私たちの関係が壊れちゃうかもしれないじゃん?今も‥正直少し気まずいけど、もっともっと気まずくなるかもしれないよね。隣の席なのに、挨拶もしなくなっちゃうかもしれないよね‥。

このまま返事しなければさ、最悪の事態は免れるよね?そう思わない?』

『私はそうは思わない』

背後から声が聞こえた。上体を起して扉の方を振り向くと、華代が少し怒った顔で私に近づいてきた。

『本気でそう思ってるの?』

『だって‥』

『だってじゃないよ!
結はいつもそうやって、すぐ人の事を気にする。それは決して悪いことじゃないと思うよ。でもね、今回は今までの状況とは違うの。返事をする事は相手への思いやりに繋がると思うよ』

さっきよりも強い口調でそう言って、あとは黙ってしまった。華代の顔をしばらく見たあと、また空と雲に視線を戻して、華代が言ったことについて考えた。静かだから風の音がよく聞こえてきた。


『結?』

今度は優しい声で私の名前を呼んだ。

『華代、ありがとう』

『えっ、なんで?』

華代に微笑んでから、両手を枕代わりにして寝転んだ。空と雲はおにごっこに疲れたのか、私の真上で止まっていた。

『それから‥ごめんね』

返事がないと思ったら、華代も横で私と同じ格好で寝転んでいた。

『もう良いよ。
いくら頼ってって言っても、一人で抱え込むのが結だもんね。だから、私はそれに気付いて支えてあげる』

『うん。
それから、もう一つごめんね』

『ん?』

華代は上体を起し、私の顔を覗き込んできた。

『授業サボらせちゃって』

華代は声を上げて笑った。私はホッとした。