「聖夜、そろそろ出発の時間だぞ」 「はい、叔父さん」 カナダ、バンクーバーの空港のカフェで、聖夜は手荷物を片手に立ち上がった。 「一郷さんには、僕から連絡を入れてある。 空港には、きっと美留久ちゃんも出迎えに来てくれてるだろう。 ……大丈夫か?」 「叔父さん、大丈夫だから、僕は帰るんですよ」 「嗚呼、そうだったな」 叔父の樹は、穏やかに微笑み、聖夜の顔をじっと見つめて頷いた。