返信は優也の予想を外れて早くきた。

玄関のカギを回すと同時に尻のポケットのケータイが振動した。

ダイニングに入って画面を開く。


 件名:REお疲れさん
 土曜日10時以降で大丈
 夫だよ。なんか、久し
 ぶりにDVDでも見よっ
 か


優也は了解と短く返信をしてシャワーを浴びた。泥みたいな体をベッドに沈めた。


翌朝、いつも通りにアラームは7時に鳴った。
優也が起きたのは、夕方の5時だった。慌ててケータイを見ると会社から何件かの着信履歴が残っている。
幸い、今日は内勤だ。ほっとしたのも、束の間、会社に連絡をしようとして起き上がろうとするが、起き上がることができない。

「あれ」

力を入れるが入らない。仕方なく横になったまま会社に電話する。

「はい、大海原経営コンサルティングの田村でございます」

「お疲れさまです。大海原の優也です」

「お疲れさまでーす。優也なんてつけなくても、社長と全然話し方違うから分かりますよー。それより、今日はどうしたんですかー」
「いやー。なんか、ちょっと恥ずかしいんだけど、体調崩したみたいで。ギックリ腰?なんだか分からないけどベッドから出れないんですよ。悪いですけど、今日は事務所行けないわ」

「ちょっと待ってください。熊谷さんに代わります」
優也は同じ案件を担当してる熊谷に事情を話して今日の仕事を仲間で分担してもらうことにした。

今日が金曜日でよかった。
優也は安心して、再度起き上がろうとするが、やっぱり無理だった。

困ったなぁと思って横になっていると、いつもの寝室の天井の様子がおかしい。目を擦る。目は普通のようだ。

オフホワイトのクロスが、かき回したカプチーノのように茶色い渦を巻き始めた。
みるみる様相を変えて、天井は幼い頃に住んでいた和室の木目のものになっていた。

もう一度目を擦る。
目をとじてー
開いてー

やっぱり木目である。

隣の拓也を呼んでみる。

金曜日で外出してるようだ。

体も起きないし、気味が悪いから眠ることにした。