拓也は、うまそうに肉を黙々と食べる。

「でも、優ちゃんはさ、自分で選んで今の会社にいるんじゃん。それに好きなことって言うけど、俺だって気楽そうに見えるかもしれないけど、楽しいことばっかじゃないよ。まず、優ちゃんはさ、書くの好きだろ?」

「うん」

「で、そういう仕事しながら金もらえてるんだから贅沢な悩みなんじゃない?」
「そうかな。同じようなこと高校の友達にも言われたよ。お前、どこが不満なんだよって」

「でさ、根岸さんと出会えたのは本当によかったけど、他の人との仕事は、やっぱ優ちゃんが感じるようなイライラとかあるよー。散々、文句つけて無意味なんじゃないかってくらい修正やら調整、繰り返した曲、平気でパクるとかさ。ザラだよ」

「まあ、そうだよね。何しても大変だよね。だから、拓也が言うように僕の悩みは贅沢な悩みだよ。ただ、ちょっと、ここのところ疲れ方が半端なくて。眠りも浅いし、彩ちゃんと会うのさえ億劫なんだよね」

「一週間に一回ぐらいしとかないと、浮気されちゃうかもよー」

「一週間ぐらいで?あれ、最後にしたのいつだっけ?」

「優ちゃん、それやばくない?最後にしたのいつって。あんなに彩ちゃん、彩ちゃん言ってたのに。まじ、疲れてるんじゃない?夏だし休暇とって旅行でも行って気晴らししてきなよ」

「そうだね。旅行はしんどいけど、休暇もらおっかな。と言いたいところだけど、休んでる状況じゃないんだよ。さっきの仕事があるから…」

「いやー、休んだほうがいいよ。俺なら絶対休むね」