「あっつい。クーラー付けないで、よく平気だね」

「そこにリモコンあるから、付けたきゃ付けなよ。で、夕飯ね。OKよ。あと、30分ぐらいでキリのいいとこになりそうなんだけど、待てる?」

「うん。その代わりと言っちゃなんだけど、そこで汗かいてるコーラ少しくれない?」

「どうぞ」

優也は、部屋中に多分何らかの規則にのっとって並んでいる拓也の音楽器材や楽器をかきわけて、アンティークの小さな椅子に腰掛ける。

コーラは見た目より、ずっと冷たくてうまい。

優也は、暑さと疲れでげんなりした身体が少しだけスカッとしたように感じた。
拓也の曲を聴くともなく聴きながら、ぼんやりしていた。

足元に置いたビジネスバッグからのぞく紙を見たら、今日の午後の商談を思い出した。

いまはプライベート。

優也は、心の中で自分に言い聞かせた。
それでもやはり、今日難航して、この夏いっぱい自分を悩ますであろう商談を思わずにはいられなかった。

いつもの頭痛が始まった。身体が重たい。

夏だからかな、

優也は、そう思いたかった。でも、季節が原因じゃないのは自分が一番知っていた。

この商談が旨く決まれば、また人を増やせる。会社の規模拡大に一歩前進だ。