気が付けば私は、見馴れた自分の部屋のベッドに横たわっていた。


時計を見ると、朝の七時。

ベッドから起き上がり、部屋の鏡を見る。


首もとには、何処にも咬まれて血を吸われた跡は見当たらない。


あれは、ただの夢だったのか…?


でも、やけに生々しく記憶が残っている。

金縛りにあった時の感覚が、今でも身体に残っていた。

そして、あの冷たく心を閉ざしているような、赤く血のような瞳(め)に魅入られた時の、あの生温さが身体に染み付いている…


あれが夢ではないのだとすれば、あのヴァンパイアは何故私の血を吸わなかったのだろうか?

もしかしたら、私に同情したの?


まさか!


そんな事がある訳ない!!

ヴァンパイアは、血に飢える「獣」だと聞いた事がある。

だとすれば、あの時私の血を目の前にして吸わない筈がない。



だったら何故?