私の唐突な質問に、久世玲人は少し眉をひそめた。

その表情に早くも怯んでしまいそうになるけど、グッと耐えた。


「い、いきなり、ごめんなさい…。でも、聞きたくて…」

「…………」

「…ほら、…あの時、あまりにも突然だったから、……ちゃんと、理由を聞きたくて…」


久世玲人は黙ったまま私を見ていたけど、一生懸命伝えた。じゃないと、ここへ来たことがムダになってしまう。


そして、しばらくの沈黙が続き、久世玲人は小さな息を一つ吐いた。


「………そんなこと聞きにわざわざ?」


冷たく吐かれたその言葉に、胸がえぐられそうになる。


久世玲人にとっては「そんなこと」かもしれないけど、私にとっては、一言で片付けられるような、そんな軽いものじゃない。

久世玲人との想いの差に、また泣いてしまいそうになる。


「そんなことってっ……」

「言っただろ、そろそろ解放してやらねえとって思ったからって」

「だからっ…、そうじゃなくてっ、私が聞きたいのはその理由をっ…」

「別に理由なんてない。……ただあの時、そう思っただけだ」

「………理由は…ない…?」

「ああ…」



理由はなかったの…?

なにそれ…

ただの思いつきだった…?


付き合い始めも、終わりも、本当にただの思いつきだったってこと…?