しばらくすると、久世玲人は私のために紅茶のペットボトルを一つ持ってきて、テーブルに置いた。

そして、前と同じように、少し離れた椅子に座る。


一体、何から切りだしたらいいのか分からなくて、視線を彷徨わせることしかできない。

ドクン、ドクン、と心臓の音が聞こえるほど静かで、逃げ出したい思いを必死に耐えていた。


しばらくの沈黙の後、先に切り出したのはやはり久世玲人だった。


「――――…で、何しに来た?」

抑揚のない静かな声が、心に突き刺さる。



「ご、ごめん、なさい…、突然…」

「ここへ来たってことは、どうしても聞きたいことがあるんだろ?前みたいに」

「………え、と…その…」

「それとも、最低だってわざわざ言いに?」

「そ、そんなことっ…」

「じゃあ何?何しに来た」



―――何しに来た…?


久世玲人に問われ、自分の中でもう一度よく考えてみた。


ここへ来た目的。


会うだけでいい、と健司に説得されたのがきっかけだけど、最終的に決めたのは私。

もちろん、責めようなんて思いは一切ない。

ただ会いたい、という思いもあったけど、それよりも、とにかくもう終わりにしたかったんだ。今のこの状態を。

いつまでもウジウジと悩みたくない。決着をつけて、次へと進みたい。

ヨリを戻すとか、戻さないという話じゃなくて。

久世玲人とちゃんと向き合いたい。

聞きたかったことをちゃんと聞いて、言いたかったことをちゃんと言って。

―――彼がそれを望んでいなくても。


だから、勇気を出してここへ来たんだ…。


「久世君…」

呟くように話し掛けると、久世玲人はこちらに真っ直ぐ視線を向けた。



「どうして…、―――何で、突然解消したの…?」