その視線に、体が固まる。

お互い視線を交わしたままのこの微妙な空気に、唯一健司だけが動じていない。

相変わらず明るい口調のまま、私に向いた。


「まあこんなとこに突っ立ってないで、中に入ろうよ」

そう言って、私の腕を引きながら、部屋の中へとズンズン入っていく。

「ほら、玲人も」

同じく突っ立ったままの久世玲人にも声をかけている。


ど、どうしたらいいのっ…!!何で私ここにいるんだっけ…!?

体中に冷や汗をかきながらパニックになっている。どうしたらいいか分からない。

会ってやって、と健司にお願いされ、それを了承し、ここに来た。

で、でも…、ここからどうすればいいのっ…!?

困り顔で健司を見つめると、ニコリと微笑まれた。


「じゃあ、俺は帰るから。あとは2人でごゆっくり」


…………え?


「かかか帰っちゃうのっ!?」

「うん」

な、なんてことっ…!!

咄嗟に、健司の制服のシャツをギュッと掴んだ。

帰らないでよっ…!!久世玲人と2人きりにしないでっ…!!

そんな思いを視線に込めて健司に訴えるけど、聞き入れてくれるはずもなく。


「あとよろしくね、なっちゃん」

「ちょ、ちょっと…待ってよっ…」

「大丈夫だって。……それより、離して?玲人が恐いから」

健司のその言葉にチラリを振り返ると、シャツを握り締める私の手を、眉間にシワを寄せながらじーっと睨む久世玲人の姿があった。


ううっ…恐い…!


思わずパッ手を離すと、その隙に健司は「じゃあね!」と逃げるように部屋から出て行く。


「ま、待ってよっ…」

呼び止めたところで待ってくれるはずもなく、情けない私の声が虚しく響くだけ。

そして、あっという間に健司は帰ってしまい、久世玲人の前に1人取り残されたのだった。