それから、1時間後―――…


「うっ…うっ…」

私は、久世玲人の腕の中でぐすぐすと泣いていた。


「悪かったって菜都。だからもう泣きやめ、な?」

「なっちゃんごめん!でも俺、見てないからさ!」

何度も頭を撫でて宥めてくる久世玲人の横で、健司もオロオロしている。


「ふえっ…だって…だってっ……」

うえぇんと泣き続ける私に、2人は困り果てていた。



あのあと、放心状態から目覚めた私は、許容範囲を超えすぎた行為をいろいろと思い出し、一気に感情が溢れ出た。


いっぱいキスされて、いっぱい触られて。

びっくりして。

恥ずかしすぎて。恐くて。

好きだけど、どうすればいいか分からないし。

下着も丸出しで、思いっきり見られたし。


いろんな感情が溢れて、泣く、という手段しかなかった。


「ふぇっ…」

「玲人!なっちゃんにどこまでヤッたんだよっ!!こんなに泣かせて!!」

「まだヤッてねえ!!」

「なっちゃんが鈍感で疎いの知ってただろっ!強引に進めたお前が悪い!!」

「何でだよっ!!そもそもお前が途中で入ってきたから菜都が驚いたんだろっ!!」

「なっちゃん来てるって知らねーし!!じゃあドアに『ヤッてます』って張り紙しとけよっ!!」

「はあぁっ!?お前頭おかしいんじゃねえのっ!?」


少々論点が違う二人のケンカにもまた泣けてくる。


「うっ…やっ、めて、よっ…」とぐすぐす泣きながら言うと、「菜都、悪い!」「なっちゃんごめん!」と、2人はまたおろおろと謝ってきた。



「健司、マジで帰れ」

「おーコワ。なっちゃん、玲人じゃなくて僕の胸においで」

「てめっっ!!菜都に触んじゃねえよっ!!」

「そんなに怒るなよ!!ちょっと触れただけだろうがっ!!」


「ふえぇっ…」


またすぐギャーギャーと再開された2人に、涙は止まるはずもなく。


結局、泣き止むまで2人の激しい口喧嘩は続いたのだった。