「――――マジで、止めらんねえかも…」

久世玲人からそんな呟きが聞こえたのは、気のせいじゃないかもしれない。

じっと見つめられるその顔は、少しずつ苦しげな表情が混ざり、ひたすら、何かを耐えているような感じ。


「…?久世君…?」

「早く帰さねえとこうなるって分かってたけど…」

「……?」

何のことか分からず、涙目のまま久世玲人を見つめていると、ゆっくりと頬を撫でられた。


「―――そろそろ、限界」


……?

何が?と返そうとしたところで、久世玲人の顔が近付き、チュと目元に一つ、触れるようなキスを落とされた。


ビクッと、思わず体が揺れる。


すると、久世玲人はその行為を慣れさせるかのように、何度も何度も目元や頬にキスを降らせる。


なに…?

ぼぉっと役に立たない頭で考えながら無抵抗に受け入れていると、久世玲人はそんな私を見て微笑んだ。


「今日は大人しいんだな」


そう言って、唇で涙を拭うかのようにキスが再開された。


え、と…なんだろ…。キス、されてる…?

抱き締められていた時は素直に身を預けていたけど…。

だって、さっきまではまるで子どもをあやすような手つきだったから、安心できたんだ。


いつもなら、こういう状況の場合どうにか離れようとするけど……今は体が動かない。緊張で固まってしまうような、いつもの感じじゃなくて……。


何でだろう…分からない…。