そして、しばらく久世玲人の腕の中で泣いていたけど―――。


いつまでも、こうしていられない…。

この腕の中は、とても心地いいけど。ずっと甘えたくなるけど。

でも…ちゃんと、言わなきゃ…。


「……くぜ、くんっ…」

食いしばるようにムリヤリ涙を止めて顔を上げると、久世玲人は「満足した?」と苦笑した。


「よくそんなに泣けるな」

「くぜくんっ…」

「何?まだ何か聞き足りねえの?」

「……ありがとっ…」

しゃくりあげながら、ようやく声を出してお礼を言うと、久世玲人は「何が?」と優しく笑う。


「ありがとうっ…」

ポロリ、と涙を流しながらもう一度お礼を言うと、また困ったような顔をされた。


背に回っていた久世玲人の腕がゆっくりと離れる。

その心地いい暖かさが突然なくなり、なんともいえない寂しさを感じていると、今度はその掌がそっと私の頬を包んだ。


「……泣きすぎ」

そう苦笑しながら、涙で濡れた目元や頬を指で拭ってくれる。

きっと、私の顔は今涙でぐちゃぐちゃになってて、泣きすぎて目も腫れているかもしれない。

最悪のコンディションだと思う。


そんな顔を間近で覗き込まれて、少し恥ずかしいけれども。

それでも今は、ただ優しいその行為が心地よくて、胸がくすぐったくなって、素直に身を預けたくなる。


「……ありがとう」


ふふ、と泣きながらも少し笑ってお礼を言うと、久世玲人は私を見つめたまま、ピタリとその手を止めた。