「菜都、お前相当ガンコだな。それに、かなりたちが悪い」

「……そんなことないもん」


久世玲人は不満げに文句を吐くけど、その言葉とは裏腹に、私の頭を撫で続けてくれる手は、とても優しい。

心が、ほわほわと温かくなる。


おかしいな…久世玲人なのに……。

それでも、その手が心地よくて、もっと欲しい。

思わず、すり寄るように抱き付くと、「ほら、たちが悪い」とまた苦笑された。



「久世君、で、どうして?」

「ん?」

「どうして、先生に本当のこと言わなかったの?」

「……この状況と会話の内容が合ってねえ気がすんだけど」

「いいから」

いつになく強気になっている私に、久世玲人も「はいはい」とようやく諦めたようだ。



「いいか、菜都が責任を感じることは一切ないから。たかが停学だし」

「……たかがって、一大事なことだよ」

「そうだったな、菜都は平和主義だからな」

フッと鼻で笑われ、なんだか少しバカにされたようだ。

「それで?」と、少しむかっとしながら顔を上げると、久世玲人は穏やかな表情で私を見下ろした。



「そもそも、最初から話すつもりもなかった。担任と教頭から聞かれたけど」

「何で本当のこと言わなかったの!?あいつら、久世君が一方的にやったって!嘘なのにっ!」

「でも、その方が俺には都合がよかった」

「どうしてっ!?私を助けてくれたのに、久世君が悪者になってるんだよっ!?」


たまらず問い詰めるように声をあげると、久世玲人は「落ち着けって」と私をなだめながら、続きを話し始めた。