どうして……。

何で、隠したの……。


あの男子の言うことが本当なら、久世玲人の停学処分は、私も関わっている…。

……ていうか、私のせいかもしれない…。



あの時、久世玲人は襲われている私を助けてくれた。


相手にどの程度のケガを負わせたのかは知らないけど、私を守ってくれた。


それなのに、何で久世玲人が一方的に悪者になってるの…?


悪いのは、あいつらも一緒じゃない…どうして久世玲人だけ停学なの……どうして何も言わないの……?


どうして……

どうして……



「久世、ヒドくね?」

「まぁでも、あいつならやりかねないかもな」

「原田さん、キレた理由ほんとに知らない?」

クラスメイトから次々と投げかけられるけど、それに答えることができない。

黙り込んでいる私をよそに、教室中は久世玲人の話題でザワザワと盛り上がっている。


違うのに―――…


この場にいることが苦しくて、思わず耳を塞ぎたくなったその時、


「いい加減にしろよ」


ざわつく空気を破るような固い声が、教室に響いた。

その瞬間、みんなの声がピタリと止み、しん、と静まる。


―――――佐山君…。


「もういいだろ。皆で詮索して、騒ぎ立てて、無神経じゃないか?」

佐山君の厳しい言葉に、クラスの皆は気まずそうに徐々に顔を伏せていく。


「原田さん、大丈夫?」

「……あ、うん…」


佐山君…。

どこまでも気にかけてくれる佐山君に、大丈夫だと答えたいけど、今は久世玲人のことで頭がいっぱい。


……とにかく、久世玲人に確かめたい。

会って、話しがしたい。


今は、ただそれだけだった。