喧嘩の相手まで聞いていない。

ていうか、絡まれたって聞いてたから、てっきり、通りすがりの悪い輩に因縁をつけられたのかと思っていた。



首を傾げながらキョトンと見つめ返すと、その男子は「あれ?知らないの?」と聞き返してくる。


……知らない。


コクリ、と頷くと、その男子は「そうなんだ、相手はね――」と、続けて喋り始めた。


「ほら、同じ学年で最近たちの悪い三人組がいるじゃん?そいつら全員を、久世が校舎裏でぶっ潰したらしいよ。聞いてない?」


「………え?」


校舎裏…?

それって…、この間、私が襲われた時のことじゃ…。


え……ちょっと待って……。


「で、その中の1人が親と先生に言ったみたい。久世に一方的にやられたって。本当かなぁ?」

ねぇ、知ってる?と、その男子は興味深そうに私に聞いてくる。


……ちょっと待って…。どういうこと…?

一方的にやられた…?


「街で…絡まれて…喧嘩、じゃないの…?」


震えそうな声で小さく呟くと、その男子は「……街で絡まれて?」と不思議そうに考える素振りを見せ、

「あ、もしかしたら健司の方じゃない?そのあと、健司たちがそいつらシメたって」

と、思い出したように淡々と教えてくれた。


それって…ちょうどこの前2人が会話してた内容だ…。


え……じゃあ、街で絡まれて喧嘩したっていうのは……嘘?

どうして…?


久世玲人は、停学の理由を嘘ついてたの…?