「実は俺、職員室で聞こえちゃったんだよね。久世の停学のこと、先生が話してるの」

その声に、クラスメイトが興味深そうに「何?何?」と顔を向けている。

私も一緒になってその男子に目を向けたけど、彼が言おうとしている内容は知っている。

――――街で喧嘩、だ。

久世玲人が話してくれたこと。


動じることなく視線を向ける私に、彼は、「ただの喧嘩だよね、原田さん」とあっさり暴露し、同意を求めてくる。


「なーんだ、やっぱり喧嘩か」

クラスメイトから、次々とつまらなそうな声が上がった。

噂話がかなり大きくなってた分、理由がただの喧嘩だと分かり、その落胆ぶりは明らか。


……複雑な気分だ。

派手にやらかしてた方が野次馬は盛り上がるんだろうけど、……なんだかなぁ。


私を囲んでいた女子達も確認してくる。

「原田さん、本当?」

「あー…」

うん、と頷けないけど、否定もしないことが肯定と受けとられ、「やっぱりそうなんだ…」と納得された。


さらに、先ほどの男子も私に続けて話しかけてくる。


「でも、あいつらが学校来れなくなるほどボコったって、久世何でそこまでキレたの?」


「――――え?」


あいつら?学校に来れないほど?

……喧嘩の相手って同じ学校の人だったの?