「ねぇ、原田さん、久世君って…何やったの?」

「あー…えーっと…」

その質問が出た途端、みんなの目つきが変わった。

興味深く、食い入るように身を乗り出してくる。知りたくてたまらない、といった感じだ。


ど、どうしよう…。


停学の理由は「校則違反」としか先生は説明しておらず、久世玲人自身も周りに何も言っていない。


「ねぇ、何?やっぱり喧嘩?」

「いや、あの…」

その通りだけど、私から言うわけにいかないよね…。先生も久世玲人も言ってないんだし…。


困り顔で口を噤むと、今度は別の方向から男子の声が飛んできた。


「俺知ってる!暴走族と大乱闘になったらしいよ!」

「え?俺は教師殴ったって聞いたけど」

「いや、実は万引きで警察沙汰になったってよ」


な、なんだこれは…。

あちこちから次々と飛んでくる「噂」に、サーッと顔が青くなる。

彼らからしたら、久世玲人の停学は恰好のネタになるようで、ありもしないことまで噂話として広まっているようだ。


あぁ…。どんどん話がデカくなってる…。

久世君、あなたのイメージって…。


呆れ気味に小さくため息を吐いていると、1人の男子が「実はさー…」と得意げに声を上げた。