「ちょっと久世君っ!!笑ってないで、少しは反省を…」

「菜都、もっとこっち来て」

しかし、久世玲人は穏やかに笑ったまま、怒っている私の声を遮ってくる。


いきなり何?こっち…?


今も目の前に座ってるから、十分至近距離なんですけどっ!?

怪訝な表情でいると、久世玲人は「早く」と言いながら腕を掴み、グイッと引き寄せた。


「キャッ…!!」

突然、力任せに引き寄せられ、ドサッと久世玲人の胸に倒れこむと、そのまま背に腕が回りギュッと抱き締められた。


ひゃあぁっ…!!な、何っ…!?

ていうか、またあの症状がっ…!!

先ほどの怒りはどこへやら、胸が締め付けられると同時にバックンバックンと心臓が暴れ出し、顔中に熱が集まってくる。


「やっ…あのっ、久世君っ…!!」

どうにか離してもらおうと身を捩るけど、久世玲人はおかまいなしで、私の手を掴みながらスルリと指を絡ませてくる。


ちょちょちょちょっと…!!

1人でパニックになっている私に、久世玲人は顔を寄せて耳元で優しく囁いた。


「寂しい?」

「さささ寂しくなんか…っ!!」


その焦りが逆に肯定しているようだ。違う!と一生懸命首を振る私を、久世玲人はまた可笑しそうに笑う。


「2週間、俺がいないからって浮気すんなよ」

「う、浮気っ!?何それっ!!」

「菜都は隙が多いからな」

「なっ!!だからって、浮気なんてしないもんっ!!」

「……なんか、俺に一途だって聞こえるんだけど?」

「っ!!」

ニヤリ、と不敵に笑う久世玲人に、カーッ!!と顔が真っ赤に染まってしまい、「そういう意味じゃないっ!!」と叫びながら、再びポカスカと久世玲人の胸を叩いた。