わき目も振らず、急いで屋上に辿り着くと、久世玲人はいつもの場所で寛いでいるかのように座っていた。

私に気付き、「菜都」と手招きしている。


その様子は、こっちが拍子抜けしてしまうほど、いつもと変わりなくて…。


「な、なんで…」

「ん?」

「停学って…なんで…」

そう呟きながら近付くと、久世玲人は「もう知ってんのか?早ぇな」と苦笑した。


「…本当なの?」

「ああ。2週間自宅謹慎。大人しく反省しろってさ」


何でもないことのようにサラリと言われ、思わずへなへなと力が抜けていき、久世玲人の前にぺタッと座り込んでしまった。


「なんで…」

こんなに心配してるのに、何でそんなに普通なのよ…。2週間も停学なんだよ…?


ジワッと、涙が浮かんでくる。


「なんで…」

抑えきれず、久世玲人の胸のあたりをポカポカと叩いた。


そんな私の弱々しい攻撃を無抵抗に受けながら、久世玲人は「お?どうした?」と可笑しそうに笑っている。


「どうしたじゃないよ…っ…。なんで…、どうして停学になったのっ…」

「あー…」

停学の理由について触れると、久世玲人は気まずそうな顔つきなる。


「何で…?久世君、何やったの…?」

「……日ごろの行いが悪いせい?」

「何それっ…、素行が悪いのは今に始まったことじゃないじゃないっ…」

「おい、コラ」


遠慮ない私の発言に、久世玲人が不満を顔に表してたしなめてくる。