「原田さん…久世が停学って、本当なの?」

心配そうに聞いてくる佐山君の言葉に、力なく首を振った。


知らない…。


だって、今朝もいつも通り迎えに来てくれたし、変わった様子もなかった。久世玲人は何も言ってなかったし、それに、停学になるようなことをしていたと思えない。


なのに、どうして…?

私の知らないところで、何かしてたの…?


男子2人の会話は他のクラスメイトにも聞こえていたようで、停学について一気に噂が広まっていく。


『停学って、今度は何やったんだろ』

『また喧嘩じゃね?』『タバコ?酒?』


そんな憶測が飛び交う中、佐山君は「……大丈夫?」と気にかけてくれる。

でも、それに返すことができない。



―――――大丈夫じゃ、ない。


停学の真偽もまだ分かってないけど、久世玲人がこの場にいないということが、真実なのでは…という不安を煽る。


―――――早く帰って来て。違うって言って。


祈るように心の中で繰り返していたその時、ポケットの中の携帯がブルル…と震えた。


もしかして…!!

急いで携帯を取り出して確認すると、1件の新着メール。

送信元はやはり久世玲人で、本文には一言、「屋上に来い」とだけ書かれていた。


……行かなきゃ…。


すぐさま、ガタッ!と椅子から立ち上がると、「…原田さん?」と佐山君が怪訝そうに声をかけてきた。


早く、行かなきゃ…。


次の授業が始まってしまうけど、そんなこと、今はどうでもいい。

「原田さん!」と制止しようとする佐山君の言葉にも振り返らず、飛び出すように教室を出て行って屋上に向かった。