だからあたしは
ひたすら国に望まれる
兵器になろうとした
何度も何度も
戦った
身も心も限界だった
絶望していた
この世界に
あたしには重すぎた
国を守るという
生まれてすぐに
与えられた
宿命の楔に苦しんだ
そしてあたしは…
知ってしまった
.
ある部屋の一室の
前を通る
訓練帰りだった
「やはり人間」
あの言葉が
聞こえた
嫌な予感がする
あたしは扉に
耳を傾ける
「力を使う度に
体が悲鳴をあげている
細胞が内側から
破壊されている」
細胞…破壊?
「あれを続ければ
いずれ使い物に
ならなくなるぞ」
使い物にならない?
あたしはいらない?
.
「しかたない
シェラ・フロエバンスは
要だ。最終兵器とする
普段の戦いには
違うVOICEトランサーを
使おう」
よかった…
まだ捨てられない
この時にはもう
あたしの頭はおかしかった
のかもしれない
兵器と呼ばれても
なんとも思わないなんて
「部屋に戻ろう」
あたしはゆっくりと
部屋へ歩いていった
.
あたしはついに
ルーダ王国の王都
シュベリアに
送られる事になった
厳重な警備の中
あたしは飛行船から
町を眺めた
何も知らない
この町を…国を
あたしはどうして
守るんだろう
そしてあたしは
考えた
わかった…
逃げてしまえばいいと
.
あたしは隙をみて
休憩地点の町で
船から逃げた
「ハァッ…ッハ…」
ひたすら走った
空を見て
自由を実感した
今あたしは
自由なんだと
.
ガシッ
腕を掴まれた
沢山の人間に
取り押さえられる
終わってしまった
あたしはもう
逃げられない
そう悟った
「馬鹿め」
確かに聞こえた
あたしを見る
人間の目が痛い
恐い
.
「大人しくしていれば
歓迎されたのにね」
そう言って牢に
シェラを入れたのは
グレイ・ハミス
後に天臨の聖者と
うたわれる少年だ
あたしは少年を睨んだ
「睨まないでよ
もうすぐ仲間が来るから」
そう言って冷たく
微笑んだ
偽物の笑顔だった
.
しばらくして
ガチャ…キィィ…
牢の扉が開いた
軽く眠っていた
あたしは目を覚ます
「仲間だよ」
先程の少年が
眠っている少女を
冷たい牢の床に寝かせた
「この子は……?」
あたしはすやすや
眠る少女を見つめる
.
「テレサ・メイ
最終兵器が君で
この子がピンチ以外の
戦いで使われる兵器」
この子もあたしと
同じ兵器
でもあたしは…
作られた兵器
この子とは
同じであって
違う存在
これがシェラ・フロエバンス
とテレサ・メイとの
出会いだった
.