いよいよ夏本場!
には程遠い5月の連休明け。
プールサイドに列ぶ我が水泳部の少数精鋭部隊。
単に人数が少ないだけとは、大人だから言わない。
「じゃあ今日から水の中に入るけど。一年生! 受験で身体鈍ってるんだから、十分な準備運動するように!」
藤木先生の有り難く、慈愛に満ちたお話を聞いてから、ラヂオ体操、柔軟体操、と始める。
さて、プールに入ろうか。
まずは足の親指だけ、ちょん、と……。
「村山君、先に入りたまえ」
「え?」
「俺は水温があと2℃上がったら入る事にするよ」
『バシッ!!』
「馬鹿言ってないで早く入る!」
ちょっ! 先生! 背中の紅葉がひりひりするんすけど。
何でこの部には人を叩くのが好きな女が多いんだ?
「しょうがないよ。女子が実権握ってるんだし」
「そりゃ村山みたいに、いつも瀬戸先輩にリードされてれば、慣れてるんだろうけどさ」
「そ! そんな事……無い……」
おや? 照れてるのか、顔が紅潮していますよ、村山君。
最近思う、俺って実はいじめっ子か、と。
しかし、中学時代に経験済みとは言え、この水の冷たさには慣れない。
ふと見ると寺尾も入るのを渋っている。
「だって私、SSで温水ばっかりだったから……」
いや、俺に言われてもね。
ことさら先生が渋い顔をしているのは、期待している俺と寺尾がなかなかプールに入らないからだろう、とは薄々感じている。
先輩達も結構呆れ顔。
しょうがないじゃん、寒いの苦手だし。
「早くしろ〜」
半ば諦め顔の先生に催促され、やっと上半身まで入ったけど……冷たい!
「これは人が入る温度じゃありません! 隊長!」
「誰が隊長だ! いいからさっさとコースに着く!」
くっ!水も冷たいが扱いも冷たい。お?韻を踏んだ?
「つまんないよ、それ」
村山め! 地味な反撃しやがって。