帰りの電車、いつもの如く瀬戸先輩と村山が2人掛けに座る。
残りのメンツが俺、寺尾、あーちゃん、妹北田なんだから、当然、4人掛けに座るんだろう、と思ったが。
「あーちゃん、ここ座ろう」
と寺尾はあーちゃんの手を引っ張り、2人掛けに座ってしまった。
「ハハハ、警戒されてるね」
妹北田がニヤニヤしながら言ってくる。
他人の不幸を面白がるのは、決して良い趣味ではないぞ。
仕方なく、というと失礼だが、妹北田の隣に座る。
妹北田は身長がある分身体も大きく、村山と座るよりも窮屈に感じる。
もちろん、妹北田と接触しても嬉しくないから、極力離れるようにしているからでもあるんだが。
「で、実際のところどうなの?」
近所のおばちゃんじゃないんだから、そんな好奇心に満ちた目で聞いてくるな。
「別に何も無いしな。クラスが一緒だから話す機会が多いってだけで」
それ以上の事は思ってても、口の軽い連中には言える訳がない。
「ふーん、そうは見えないけどね」
妹北田め、今度から表記を妹だけにしてやろうか?
妹北田や瀬戸・村山組は、終点まで行く俺や寺尾達より先に降りる。
ん、と。つまりは俺一人ですか。
なんかなあ。寂しいと言えば寂しいが、今日は仕方ないかな。
携帯でチラホラ、とサイト巡りでもしますか。
と、思ったところに
「浅野君もこっちきなよ」
あーちゃんが声を掛けてくれた。
「ほーい」
喜んで行くのも変だし、平静を装って車内移動。
は、いいが。
2人掛けシートを倒し、4人掛けにすると、寺尾は自分のかばんを正面に置いた。
つまり、俺が正面に座って欲しくない、という事かな?
あーちゃんはそれを見て、ニヤニヤ笑っている。
まったく、妹北田といいあーちゃんといい、人の不幸がそんなに面白いか?