するとそこへ他の女性陣が寄ってきた。
「寺尾ちゃん、浅野君には気をつけた方がいいよ」
今まで出番の無かった鮎川が、何を言うか!
「そうそう、浅野君が寺尾ちゃんを見る目ってやらしいもんね」
この! 同じく出番の無かった西岡まで!
しかも寺尾から冷たい視線を浴びているじゃないか。
「仕方ないだろ。これでも、一応思春期の高校生なんだから」
と言ってみて、墓穴掘ったと思った。
「あれ? でも私達には目もくれず寺尾ちゃんばっか見てるよね?」
くっ! そんな所を見ているとは。さてはお前達はパパラッチだな?
「やっぱりそうなんだ! なんか怪しいと思ってたら」
水着を買う必要が無いのに来ている妹北田までが話の輪に加わってきた。
「うるさい! うるさい! うるさーーい!」
もう公衆の面前という事を忘れ、とは言え他の客はいないけど、叫んで話をぶった切る。
「さっさと買って行こうぜ!」
強権発動的に言ってみるが、女性陣はニヤニヤしているし、寺尾は恥ずかしがってカーテン閉めてるし。
「おーい、高橋。決まったか?」
わざとらしいがそうやって場を離れるしか思いつかなかった。
芸人として、これは屈辱だ。
そんなやり取りもありながら、それぞれが気に入った水着を手に会計を済ませる。
あんな事を言いながら、飯島先輩が交渉してくれたお陰で一割程安くなったのはありがたい。