「浅野君はどこのメーカー使ってるの?」
陳列された水着を見ながら村山が聞いてくる。
「俺は別にこだわってないな。ゴーグルだけはa社って決めてるけど」
実際、世界選手権やらオリンピックに出るならまだしも、趣味でやってる分にはたいしてこだわりは無い。
ただ、ゴーグルは個人的にa社の物が視界に合うから、好んで使っているけど。
「そっか。どうせなら、皆同じがいいよね」
いや、別にペアルックとかじゃないんだから。
あ、あれはデザインか。
高橋は何か決めかねているのか、尋ねてくる。
「あの、基準ってある?」
「んー、ない!」
せっかく一緒に来たんだが、俺が水着選びで高橋にアドバイスできることは特に無い。
「まあ、しいて言うなら、はみ出さないもの、かな?」
俺の下ネタには気付かないのか、高橋は意味不明、と顔に書いている。
すべった時の下ネタほど恥ずかしいものは無い。
「バカ言ってないで早く決めなさいよ」
瀬戸先輩は何でこんなに村山にくっついているんだろう?
単なる飼い主とペットの域を越えているよな。
「ね、浅野君。これどうかな?」
女性用の競泳用水着を手に、寺尾が聞いてくる。
黒地に斜めに虹色のラインが入った、結構可愛い系の水着だ。
「どうと言われても、着て無いとイメージ湧かないよな」
「そう? じゃあ試着してみようかな?」
「なら手伝うわ」
「こら! エロオヤジ!」
ちっ! 自然に言ったつもりだがあーちゃんに見破られた。
「浅野君って意外とエッチなんだね」
寺尾にまで言われてしまった。ちょっと反省しよ。
試着室のカーテンが開き、先程の水着を着た寺尾が姿を現す。
身体のラインに合っているし、窮屈でも生地が余るでもない模様。
「惜しいのは露出が少ないことぐらいか」
「競泳用だから当たり前でしょ!」
……いかんいかん、ついつい本音が出ていたようだ。