「寺尾さん、今日はどうかな?」

「んー最近調子良くないからなあ」

「みたいだね。いい成績、出せればいいけど」

 予選5組中4組目の2コースと言う事は、単純にエントリータイムで13番目。

 総合10位を狙うのが精々の位置だろう。

 予選の早い組なら、エントリータイムに関係無く順位が入れ替わったりするが、上位陣はタイムが安定しているから、そうそう順位が上がる事はない。

「でも由美ちゃん気合い入ってたよね」

 妹北田がマネージャーらしく、寺尾の様子を見ていたらしい。

「らしいって何よ! ちゃんとマネージャーやってますから!」

「浅野君はいつも一言多いの!」

 あーちゃんまで参加してきたら、俺には勝ち目がないな。

「浅野! バカ言ってないで声出す!」

 先生は相変わらず俺だけに怒鳴るんですね。


 寺尾が飛び込み台に上がる。

 大会には慣れてないとは言っているが、それなりに緊張していても、ほど好い程度だろう。

 スターターの腕が上がった。

『位置について

 ヨーイ

 パーン!』

 各コース綺麗なスタートを切った。

 寺尾が潜水から上がってきた位置は、いつもよりやや早いか、10mより手前。

 他のコースに目をやると、やはり4、5コースは水面に上がってきた時点で頭一つ抜け出している感じだ。

 反対に寺尾の隣、3コースは潜水でミスったか、寺尾より若干遅れ気味。

 だがスタートでこの程度の差なら、途中で軽くひっくり返せる。

「どう? 由美は」

 あーちゃんが隣から聞いてきた。

「スタートは良い方だろう。ただ他の選手がどんな選手か分からないからな」

 いくらなんでも、名前も知らない女子選手の泳ぎっぷりまでは分からない。

「え? そうなの?」

 何で驚いてるのかな?

「浅野君なら、念能力とか使って、どんな選手か分かりそうだもん」

 そんな冨樫マジック使えるか!