市大会に参加している高校は20校。中学校は25校。
予選組数は県予選より若干少ないが、中学生の予選1、2組などは完全初心者レースみたいなもので、タイム的にはかなり遅い。
フリーやブレストの進行具合は県予選と大差ない。
しかしバック、特にバッタになると中学生は参加1名や不参加の学校も多く、予選2組しかない場合もある。
2組なら予選やらなくてもいいのに、とか思うけど。
「それで村山は中学生の何組で泳いできたんだ?」
予選から帰ってきた村山に確かめた。
「なんで中学生のレースに出なくちゃならないの?」
なんでって聞かれても。
「見た目的にもタイム的にも中学生っぽいから、かな」
「そんな事言ったら、寺尾さんだって……」
と言いかけて気付いたらしい。
「気付いたな。寺尾は見た目こそ残念な胸だが、泳ぎは高校生らしいからな」
『バッシーーン!!』
「このエロオヤジ!」
イッテー!
あーちゃんに聞こえないように言ったはずなのに。
恐ろしい地獄耳だな。
「それは浅野君が悪いよ。女の子が一番気にするとこなんだから」
村山に女心を諭されるのは気に食わないが。
「というか、よくよく考えたら、下撲という立場ではあっても、未来には瀬戸先輩の彼氏が約束されている村山の方が、俺より格上なのか?」
「そんな……」
下撲の部分に反論するより、彼氏の部分に照れたみたいで、村山はもじもじする。
「カミングアウトしたんだ。開き直ればいいじゃないか」
実際、村山と瀬戸先輩だけの話なら、おおっぴらに付き合ってるんだろうし。
「っていうかさあ、もう由美ちゃんのレースなんだけど?」
おっと。村山イジメなんぞしていて見逃したら洒落にならん。
「ちゃんと応援するんだよ」
あーちゃんに言われるまでもなく、全力で応援するさ。
そう言えば藤岡先輩は5コースだっけ。どんな先輩だったかよく見て思い出すか。
予選4組が8コースの選手から順に入って来る。
4人目が先輩なんだが……キャップとゴーグルであまり判らなかった……。