「へえ、部長さんかあ。立派なんだね」

 鷲見先輩は優しい眼差しで島崎を見つめるが、俺にはそんな眼差ししたことないぞ。

「そんな……」

 多分、年上に見つめられるのは初めてなんだろう、照れまくりだな。

「じゃあ来年の新入部員第一号だね」

 鷲見先輩? もう勧誘ですか?

「あ、はい! 頑張ります!」

 島崎まで、何その気になってんだ?

「たしかにお前がうちの部に入ってくれるのはありがたいが」

「そうですよね! 頑張ります!」

「いやな、羽鳥高校はお前の成績ではかなり厳しいぞ」

 俺の言葉に先輩達の顔が引き攣れるのが分かる。

「もしかして、浅野君より成績良くないのかな?」

 俺を基準にするのはどうか、と思うが、飯島先輩の心配も的外れではないのが悲しい。

「まあ島崎は水泳以外取り柄がない、かな」

「他にもありますよ! 弁当の早食いとか、カレーの大食いとか、好き嫌いなく何でも食べるとか」

 食べる事ばっかりじゃねーか。

「そう、なんだ。まあ若い内はよく食べるわよね、ハハハ……」

 先輩達はそんな事を言いながら、遠い目をしている。

「島崎。思春期の女の子に大食いの話はナンセンスだったな」


 そんなこんなで島崎は自陣に帰って行き、入れ違いに着替えていた寺尾達が戻って来た。

 は、いいが。

「なんであーちゃんや妹北田まで着替えてるんだ?」

「ん? 読者サービスよ」

 誰だよ、読者って。

「ジャージじゃ暑いし、下だけでも涼しくしようかな、ってね」

 ジャージじゃ暑い、んじゃなくて、皮下脂肪が厚いの間違い……かと思うが、以外にもそうでもないんだよな。

 あーちゃんは体育で、他のマネージャーも、練習の休憩時間なんかには涼みがてらに泳いでいるから、水着姿は見た事はあるんだけど。

 2人とも、顔の丸さとは違い、下半身はそれなりにすっきりしている。

「浅野君、あんまり見ちゃダメだよ〜」

 寺尾に言われるまでもないが。

「まああーちゃんや妹北田には興味……」

と、これ以上は自重自重。またいじられるだけだし。