ああまただ。

また見てしまった。


そう思いながら次第に表情が暗くなる少女の目の前には、一台のテレビ。

『そう、いるんですよね。本当に……が…える人が…』


テレビの中で流暢に話しだす評論家達に怒りを覚えた。

よくもまあ、知りもしないことをすらすら言えるものだ。


少女は無言でリモコンに手を伸ばすと、そのまま思い切り電源ボタンを押した。

プツ…

小さな音をたてて電源の消えたテレビを前に爽快な気分になった気がした。


「あ、何で消しちゃうのっ!?」

その声に振り返れば、母親がエプロンを付けたまま残念そうな顔をして立っていた。

「何でって…寧ろこっちが聞きたいんだけど。嫌がらせか何か?」

嫌味っぽく言ってみると、母親は拗ねたように返す。

「だってあの番組面白いんだもん。それに、そんなに嫌なら見なければいいじゃない」

正直少女には、あんなオカルト番組が人気を呼ぶ理由が分からなかった。

こちらにとっては、見るに耐えないと言うのか、聞くに耐えないと言うのか。
とにかく不愉快という以外の何でもないというのに。

だんだん母親に言い返すことすら面倒くさくなって、少女は小さく溜め息をついた。

そしてそのまま部屋を出てバッグを手にし、玄関へと向かう。

「あ、ちょっと聖!!」

聖と呼ばれた少女は、その言葉には振り返ることもなく玄関のドアを開く。


「いってらっしゃい」

「……行ってきます」


少し間をあけてそう言うと、少女―聖は家を出た。


外の外気は想像以上に冷たくて、ドアを開けた途端に冷えた空気が肌を刺す。

「寒……」

無意識のうちにそんなことを呟いてしまっていた。
それくらい外は寒い。

今はまだ一月。
当然と言えば当然の寒さだ。

そんな中でも休まず学校に行こうとする意欲を持つ自分は、若干偉いと思ったりもした。

義務教育もあと二ヶ月で終わると言っても、結局自分が学生を続ける事は確かな訳で。

そして、そんな今の自分もまだまだ餓鬼なんだと実感するのだ。