7時前に二人はマンションに到着した。飲み会なんでタクシーで来たらしい


『お邪魔します。乙女、ビールすぐ冷やして』


『ありがとうございます』さすが社長…高いビール買ってきてくれている

ホットプレートを挟んでお互い沈黙の時間が流れた…


『昨日は申し訳ありませんでした!』と夏子が謝った


『個人的な理由で八つ当たりしました。本当にすみません』


『もういいんだよ。今日は楽しくしようよ』と社長が言った


『こっちこそごめん!夏子さんが辛い目にあってたなんて知らんと、調子こいてもて…これ、お詫びに…』


隼人さんから夏子に手渡されたのは、ブーケのような小さい花束だった


『あ、ありがとう…ございます』


『じゃあお好み焼きは隼人さんに任せますね。この一品は夏子が全部作ったんですよ。私は全然ダメだけど、夏子は料理上手ですから』


『夏子さん、料理もいけるんか?すごいな…音楽家で料理もできるなんて、ほんますごいわ…』


『うちは母も姉も料理ダメだからいつも私作ってたんです』


『そう。うちのお母さん、カレーと玉子焼き以外はスーパーの惣菜。その血私が受け継いでいるんです』


『俺達のお袋もそうだったよな?カレー以外は外食かスーパーのだったから』


『ほんまや懐かしいな…俺らのお袋は小学生の頃死んでもてん。兄貴は親父のところで育って、俺は叔母のところに養子。その叔母がめちゃくちゃ料理うまくて、初めて大阪いって食べた時は感激したわ』


『ここのお袋さんは、昔料亭で働いてたから料理もこってるんだ』


社長のお母さん…亡くなってるんだ。事情ってそれか…