「あ、今来ましたので、電話代わりますね。」

母親は私を見るなりそう言って、受話器を差し出してきた。

「え?私?」

突然のことに不意をついたものの、冷静さは失わず、自分を指差し、ジェスチャーで聞く。
母親は、それに答えて大きく首を縦に振る。

時計を見ると、7時30分を指している。
いつもだったら、もう朝食を食べている時間だ。

「無理無理」

嫌な顔をして、手でばつをつくる。
しかし、母親はひかず、受話器をさらに近づけてくる。

私は観念し、ため息をつきながら受話器を受け取り耳にあてた。