みんながどこかそわそわしていた春も過ぎ去り、夏になった。

「暑いー!」

7月。
梅雨の湿気も消え、どちらかといえば乾燥した、日照りの日が続いていた。

いつも落ち着いている矢那賀君も、さすがにこの暑さには耐え切れないらしい。
うちわを両手にもち、顔を仰いでいる。

「いいなぁー。涼しそう」

そうつぶやくと、こちらを向いてあの笑顔で話しかけてきた。