「俺、本当にガキで。……こんな気持ち初めてだし。不安で。ホントは沙耶を縛って片時も離れず傍に置いておきたい。そうでもしないと……沙耶が離れて行きそうで」
苦しげに揺れ動く二つの瞳がゆっくりと瞼で隠される。
「俺はまだ何も持ってないし、何の力もない――永遠なんて、簡単には約束できない。けど」
硝子のように淡い透き通った瞳が私を捉えた。
「ただ、信じて欲しい。沙耶にはもう、なにも偽らないから」
その言葉と彼のから放たれる強い想いに私は囚われる。
「沙耶の周りにいる他の誰かじゃなくて……俺を信じて、選んで欲しいんだ――俺との未来を」
辺りが明るくなって暖かい何かを頬に、腕に感じた。雨はいつの間にか止んでいて雲間からまだ沈まない太陽が、私たちを照らす。雨上がり独特のその匂い。濃いオレンジの光に照らされた彼の綺麗な輪郭。再び伏せられた長い睫毛にはまだ水滴が光っていた。
「勝手なことばっかり言ってる自覚はある……口だけだと思われても仕方ないけど」
ゆっくりと心に染み込んでくる言葉だった。