「……とりあえず…記憶を消す…。」

物騒な凶器を握りしめたまま立ち上がったシグレとか言う彼は、あたしの方を見据えた。


目が合った瞬間、無意識に肩が跳ね上がり、呼吸が止まる。

「ひっ!」なんて在り来りな言葉さえ出て来なかった。



歩み寄ってくる彼の足音が頭に響き、あたしの体は困惑に揺れる。


伸びてくる手は、真っ白で、とても華奢だった。



記憶を消された後、あたしはどうなるんだろう?

家に返してくれるの?

それとも、何、殺されんの?


殺されたら、誰が遺体を親まで持って行ってくれるんだろう?


彼の掌が、僅かな距離を置いて頭に覆いかぶさるのを感じながら、あたしは只々考えた。



シグレは、あたしの目を真っすぐに見据え―――




「………あ。…目が…」




彼の瞳が紫色に変色したと思ったときには、彼は行動を止めていた。