どのくらい走ったのだろう。『そこ』には傘を差した人々がいた。
 人々をかき分けて進んだ。何か叫んでいたかもしれない。
 群れの前列で目に入ったのは横たわった『彼』。
 「うそでしょ…?」
 誰かが私の腕をつかんだ。
 「あ…。俺…タツヤ…、…スバルの友達。」
 黒髪で整った顔の男が言った。
 「なんで…!?ッ…!スバルはどうして…。どうしてこんなっ!」
 「落ち着いて…。」
 気付くと私は涙を流していた。
 「スバルは…。あいつはあんたの家に行こうとして…。ここの四つ角で…車に…。」
 うつむいたタツヤの頬を涙が伝った。
 崩れ落ちた私は泣き続けた。叫んで、泣いた。